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Ongoing AIR vol.6 − 進藤冬華さん インタビュー2
このインタビューは、こちらのつづきです。

 
ひとつひとつ丁寧に向き合い、リアクションをしていく

― 北海道内や周辺地域の少数民族の方々とお話をしていると、いわゆる「日本人」の残酷な歴史にも触れなくてはいけない場面もあったんじゃないですか?
 
進藤 そうですね。それで一時は、自分が日本人であることにネガティブな感情をもったこともありました。
 
― わかる気がします。日本以外の東アジアの人と歴史の話題で、肩身の狭い思いをしたという経験談はよく聞きますね。
進藤さんは、ネガティブな感情を乗り越えられましたか?
 
進藤 うーん、乗り越えたというよりも、今は現地の人々と交流をとおして見えてきたものを真摯に受け止め、どのようにリアクションしていけるかに重きを置いています。作品制作は、自分が見て感じたことをわたしなりに形にすることだと考えています。
 
― なるほど。さっき日本とその周辺地域の複雑な状況についてお話ししてくれましたが、進藤さんの作品はその状況を知った上でのリアクションなんですね。
 
進藤 はい。実際に地域の方々と話してみないと分からない状況は沢山あって、だから考えることも沢山あります。
たとえば、ひと言で「アイヌ」と言ってもいろいろあると思うんです。北海道や、過去には東北、サハリンなどいろいろな場所にアイヌの人々は住んでいて、地域によっ て特色がありそうです。だから最近は、「アイヌ」という言葉でごろっとまとめて語るのも失礼だと感じるようになりました。
 
― 地域だけではなく、それぞれの家族や個人の事情もあるでしょうしね。
 
進藤 本当にそう思います。だから今は、ひとつひとつ、自分の見たもの出会った人たちに対して、正直に接していくしかないと思っています。ひとつひとつ、丁寧に向き合っていくことを一生続けていくしかないんじゃないかなぁ、と。
 
― 進藤さんの活動は、文化人類学や民俗学などの学問と共通点があるようにも思えますが、あえて美術でやっているのはどうしてですか?
 
進藤  うーん、それはよく訊かれる質問で、実際にそういった分野の学者さんと地域をまわることもあります。でも、わたしが興味をもっているのは、あくまで個人間 のコミュニケーションをとおして見えることなので、学術的なアプローチとは少しちがうと思います。わたしの活動を見て「そんなやり方はまちがいだ」と怒る 学者さんもいるんじゃないかな。
 
― 学術的なアプローチだと、できるだけ多くのサンプルを集めることが重要ですもんね。
 
進藤 そうですね。理論的にも学術的じゃないと思います。でも、わたしはこの地域の様々な背景を持つ方々と少しずつ信頼関係を築いていくことを大切にしたいので、やっぱりこれは美術の中でやれることなのかなと思っています。
 
― 信頼関係は、すぐに築けるものではありませんよね?
 
進藤  そうですね。たとえば、わたしはサハリンに行くと、いつも同じウィルタのおばあさんに会いに行くんです。彼女は6歳になるまでウィルタの伝統的な生業であ るトナカイの牧畜をしながら生活をしていました。6歳以降はロシアの教育を受けたので、今はロシア語を話しますが、ウィルタの言葉も覚えているのです。
 
サバイバル能力が高い女性たち、そしてそれを教わること
 
― 進藤さんはロシア語も話せるんですか?
 
進藤 最低限のことしか分からないので、どうしても言葉が必要なところは通訳をお願いしたりもします。でも、技術を教わるときは、言葉ってあまり重要じゃないんですよ。おばあさんがホイホイホイってやって見せてくれたのを、わたしは見よう見まねでやっていくんです。
日本もそうですが、ウィルタやほかの民族でも、おばあちゃんたちは何でもできるんですよ。昔は、不要になった衣服をほどいて他のものに作り替えたり、刺繍をほどこしたりするのが、女性としてのたしなみだったからかもしれません。
 
― 今は、服の丈直しなどをお店にお願いすることが増えて、家で裁縫箱をとりだす機会も減ってしまいましたよね。
 
進藤 そうかもしれませんね。
そもそも、わたしが刺繍や裁縫に興味をもちはじめたのは、和裁を教えてくれた祖母の影響なんです。うちの祖母は、本当にすごいんですよ。
2011 年に開催した『二人の作業場』という展示のために、祖母と一緒にたくさん作品をつくりました。祖母に「こんなのをつくりたい」とデザイン画をみせたりする と、すぐにどうやれば上手くできるかを教えてくれたり、知らない間にちゃっちゃっちゃっとつくってくれたりしました。昔から服をほどいたりしているので経 験から分かっちゃうんでしょうね。
 
― なんか、かっこいいですね。
 
進藤  ほんと、かっこいいんですよ。手仕事にかんする生き字引のようです。彼女たちは、とてもサバイバル能力が高いように感じます。そんな彼女たちを見ている と、安心するし憧れます。うちのおばあちゃんにしても、サハリンのおばあさんにしても、長く生きてきて身につけた能力がある。その能力をひとつずつ丁寧に 教わって、習得していくことによって、「昔」がわたしの中に貯まっていくように感じるんです。
 
― 「昔」が自分の中に貯まっていく感覚?
 
進藤 うーん、言葉で表すのはむずかしいですね。
なんていうか、自分の中に「過去」が詰まっていく感覚があるんです。過去を知ることは私が地域を理解するための方法だと思います。
また、「日本とは何か」という話に戻りますが、日本を説明しようとしてシンプルな言葉に置き換えようとすると、へんに偏りが生じてしまう気がするんです。
 
― うーん。「日本は単一民族国家だ」みたいな表現も、いまだに聞きますしね。
 
進藤  そういうのもありますね。現実にはいろいろな要素があるのに、そこから何かを省略しようと切り落としてしまうと、本当の姿がうまく見えなくなってしまうん です。そうならないように、自分できちんと判断ができるように、なるべく細かくひとつひとつのことと向き合うことが必要だと思っているんです。

(インタビュー3 〜東京でのこと〜 へつづく)
進藤冬華「もんよう どうしよう」展は、4月23日(水)〜27日(日)です。おたのしみに。 



 
| Ongoing AIR | 09:38 | comments(2) | trackbacks(0) |
コメント
インタビュー3のリンクがされていません。3も読みたいです!
| yuki | 2014/04/19 7:41 PM |
yuki様

コメントありがとうございます!!
Ongoingスタッフです。
進藤さんのインタビュー記事、
読んでいただけてうれしいです。

「インタビュー3」は週明けにアップ予定です。
すてきな記事に仕上がるようがんばりますので、
またお読み頂けたらうれしいです。

アップいたしましたら、facebookページでお知らせいたしますので、チェックしていただければと思います。

https://www.facebook.com/ArtCenterOngoing




| yukie (from Ongoing) | 2014/04/20 4:11 PM |
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