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鷺山啓輔『穴とゆめ』 Pre-Ongoing School

「現代アートって、どういうイメージがありますか?」という問いかけから、鷺山さんのプレオンゴーイングスクール(3月31日)は始まりました。

 

「近年、全国的にアートイベントがとても増えましたが、現代アートへの理解が深まったかというと定かではありません。やっぱり『わからない』と感じる方も多いと思います。その『わからない』を埋めるのに言葉は有効だと思います。ただ、言葉ですべて説明できてしまうのであれば、作品は必要なくなってしまいます。言葉で説明しきれないところがあるから、作品で表現しているので、ぜひ皆さんが作品をご覧になって感じたことを大切にしながら聞いていただければと思います。

 

今日のスクールでは、『穴とゆめ』の映像の制作メモからお話しできればと思って、こんなの(写真参照)を持ってきました。これは、荒編集が終わった段階で、モチーフやコンセプトのアイディアを自分のなかに定着させるために、通勤途中の電車の中などでiPhoneにメモしたものです」

 

△「荒編集」が終わったあとのメモ

 

娘への思い、父として

いろいろなお話のなかから、特に印象的だったのは娘さんへの思いでした。

 

「もうすぐ1歳半になる娘がいるんですが、彼女が産まれてとても嬉しかったんです。実際に妻のお腹から出てきたのは1年半ほど前ですが、その10ヶ月前からすでに命が始まっていると想像するととても愛おしく感じていました。そういうこともあって、映像に出てくる洞窟は母親の胎内(体内)のようなイメージも含ませることができたら、と思って作りました。

 

ただ、親になってから『死』を強く意識するようにもなりました。

 

子供ができると学資保険というものに入ることを考えるので、その営業マンと話す機会が自然と多くなります。セールストークのなかで、『 鷺山さん、いま人生のなかで絶対死んではいけない瞬間です 』という言葉があったんですよ。営業文句だとわかっているのに、とてもドキッとさせられたんです。娘はまだ1才3ヶ月だし、妻は毎日家のことと育児を一生懸命やってくれている。ここで、万が一にでも僕が急に倒れたら家族はたちゆかなくなってしまう。『絶対死んではいけない』けど、これから先いつ何があるか分からないから保険に入っておきましょうっていう営業トークを反芻しているうちに、自分がいつか死ぬことを意識しながら『何をしてあげれば、将来、娘にとって幸せか』とか『父として何をしてあげられるか』とか、そういうことを考えるようになりました。

 

そして、父としての自分を考えたときに、自分の父親が自分にしてくれたことというのも思うようになったんですね。なので、今回の作品はその感謝の気持ちを表した賛歌のような、鎮魂歌/レクイエムのような意味合いもあります。あ、父は健在ですけどね。この辺が微妙に言葉で定義しづらいので、やはり言葉以外の表現が必要なんだなと思いますね(笑)」

 

 

 

映像のなかに大きな時間の流れを含ませる

また、娘さんが生きるこれからの未来について、心配もしていました。

 

「社会的なところを見ると、これからの未来が明るいとは思えません。自分たちが子供のときは学校で戦争体験をきく機会があったりしましたが、あと5〜10年もすれば実際に戦争を体験したご年配の方たちから話を聞くことも難しくなるでしょう。日本は、ほぼ戦争を経験していない世代だけになってしまいます。

 

そういうことに対する気持ちもあり、作品のなかに(親子三世代の時間だけではなく)もっと大きな時間の流れを含ませることはできないかと思い、この穴で撮影をしました。これは、千葉の南房総にある戦争遺産で地下壕として使われてた場所なんです。ここは、岩肌には海底の地層も見えるんです。地下壕というだけでは社会的な意味ばかりを強く帯びてしまうと思いましたが、もっと大きな自然の営みも感じられる面白い穴なんです」

 

そのほかにも、鷺山さんの映像には、人工的なものと自然の営みが交互に入り混じった風景や、パーソナルなものとユニバーサルなもの、過ぎ去った出来事とずっと変わらないもの、現実と幻想、死と希望などを象徴するイメージが連なっていきます。『穴とゆめ』というタイトルのように、ふたつのイメージがぶつかりながら不思議な化学反応を起こし、互いが互いを包みこめる無限の入れ子構造となってさまざまな要素が存在しているかのようでした。

 

 

 

―スクールを終えて―

鷺山さんは「穴」が好きな作家さんです。今回のスクールでも「入口と出口があって、あいだに暗い通路がある。とてもシンプルな構造なのに、そこから喚起させられるイメージのゆたかさに魅力を感じています」と話されていました。

今回の映像は、鷺山さんがその「穴」を駆使して、娘さんに「君が生きている世界はこんなところだよ」と教えてあげているような映像だと、わたしは個人的に感じました。たくさんの要素のなかから特にそう感じてしまったのは、わたし自身が出産を考える年齢だからでしょうか。人生の別のステージでこの作品を観たら、別の要素をキャッチするのかもしれません。たくさんのレイヤーがあって、いまの自分の状態を映し出す鏡のような作品は(ときに恐ろしいですが)出会えるととても幸せです。いつかまた「穴とゆめ」を観られますように。鷺山さん、スクールありがとうございました!

 

| プレオンゴーイングスクール | 17:41 | comments(0) | trackbacks(0) |
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